Day5 湯の児温泉-津奈木太郎峠-湯浦 14km
薩摩街道前半の最終日、足の具合が悪いので行けるところまで歩けば良いということにし、夜明け前の出発は止めた。出発は6時40分、日の出時刻寸前でもうすっかり明るくなっていた。
柑橘類の栽培が盛んな斜面に続く道をのんびり歩く。街道から外れているので、深くは考えず淡々と進んでいく。津奈木町役場の近くを通って国道3号に合流。新幹線をくぐった先で、薩摩街道も国道に合流だ。
歩き始めて1時間弱、コンビニがあったので朝食にパンを購入。昨日同様歩きながら食べようと思ったが、峠道に入る前に詰めの状態をチェックしたくなり、駐車場に靴下まで脱いで座り込み、朝食。爪は大丈夫そうなので、再出発。
すぐに国道から逸れ、津奈木川を渡る。石造りのアーチ橋は1849年に架けられたもの。

再び国道に合流したところに100年以上前から続く亀萬酒造がある。焼酎文化圏の土地で続く日本最南端の天然醸造蔵元だそう。

千代川に沿って旧道を進んでいく。民家が切れるところで国道3号線をくぐり、道は山の中に入っていく。

舗装してあったのは農地がある部分まで。そこからは山道だ。ここからが薩摩街道の最難所といわれてきた三太郎峠となる。最初が津奈木太郎峠、その次の佐敷太郎峠、3つ目が赤松太郎峠である。いずれの道も廃道となり長らく通行が困難だったが、近年整備され歩けるようになったらしい。
最初のうちは案内板もしっかりし、歩き易い道だった。

しかし途中からは踏み跡も定かでない山の斜面を赤いテープのしるしを頼りに進んでいくことになる。

何とか登ると舗装道路に出る。1901年に出来た旧国道3号線だ。逆から来た人のための降り口の看板は地面に落ちており、ここから下るのも勇気がいりそうだ。

旧国道3号からの分岐は車の走れる林道でホッとする。

地図の旧道との分岐にあった看板は薩摩街道の方向を林道側に示していた。旧道の場所は荒れた森の中でなんとなく分かったが、足を痛めていることもあり、素直に林道を進む。
しかし、林道に交差した薩摩街道を示す看板が…。先ほどの看板を無視し森の中の廃道を進んだら出て来ていたはずの場所だ。看板があてにならないことが良く分かる。旧街道を保存しようというボランティアの人々が建てた看板で、その後状況の変化もあるので、仕方ないところだ。

薩摩側はこの道なら下れたという感じで、逆から来ていたら進んだであろう道だった。

江戸側、すなわち進行方向で登りの方は分け入れないような森で、進めず。そのまま林道を歩いていく。この道は地形図になかったので、旧街道から離れないようにGPSを何度もチェックしながら歩いた。林道の行き止まりは平成6年に林道が完成したことを示す杭があるのみ。

旧街道と思われる方向を探すと赤いテープが見え、それを頼りに進んでいく。斜面が崩れている所にはロープも張ってある。しかし、ロープを張ってから崩れたと思われる場所もあり、迂回は大変だった。

ようやく旧国道3号線の津奈木峠付近に出る。

薩摩街道の峠だった場所はそこからさらに少し上。登り口にはロープがあったが、ここもロープを張ってから崩れたようで、登るのは少し苦労した。

崩れたところを過ぎても急斜面をロープを頼りによじ登る大変な道だった。

9時20分、ようやく津奈木太郎峠に到着だ。

下りは街道としては荒れているが、登山道だと思えば非常に歩き易い道が続いた。

車の走れる林道に出たところで看板が旧道らしき山道でなく林道を示していたのでそちらを進む。
しかし、進んでいた林道はどんどんと薩摩街道から離れていく。でも分岐にはまだ赤いテープがあったので大丈夫と信じ、どんどん下る。

そして行く手を柵に阻まれた。広大な柑橘農園が広がり、その周囲を鹿よけの高い柵で延々と覆っているのだ。道沿いにある獣除けの柵は通常人が開けて通ることができるようになっているが、ここは鍵が閉まっていた。イノシシ用の柵なら斜面を使って越えたりも出来るが、ここは無理すると柵が壊れそうで出来ない。ずっと戻ることも考えたが、相当下ってしまったし、戻っても道がなくなっているから看板がこちらに向けられていた可能性がある。かなり悩んだが道なき山を無理やり越えることにする。

尾根筋までは何とか登れた。しかし、下りは地面が滑り、中々降りる場所がない。立木に掴まりながら滑る斜面を下って行ったのだが、枝が折れて数メートル転落する。剥がれかけた爪のある足先をひっかけ激痛でしばらく立ち上がれずだ。耳も切っており流血していた。泥の斜面を滑り落ちたので服もドロドロ。手もドロドロなので傷口を確かめることも出来ず。
しばし休んだあと何とか下りきって人里に出た。そこで手を洗い、血を拭いて大休止。血は止まっているし、平地を歩くなら足の痛みもないが、次の山越えは足の踏ん張りがきかないので無理。計画よりも手前だが、最寄駅から帰ることにする。しばらく歩いてスーパーがあったので、ここで弁当を買って昼食。駅前の途中に温泉があり、入ることも考えたが、そのまま湯浦駅へ。薩摩街道歩きの前半は終了し、そこから一気に帰宅した。