徒歩旅

Day15 津市白塚町-津宿-雲出宿-六軒宿-松阪宿-徳和駅 29.2km

　１時半頃目覚めた。仮眠室で寝てたのは私だけだったので結構眠れたが、やはりまだ眠い。起こされてから出るつもりだったが目が覚めたので、ゆっくりと出発準備を始め、最後は館内の施設を見て回って、２時すぎにチェックアウト。写真は本日の日替わり湯の八漢湯に配合されていた漢方薬。

　知らぬ間に雨が降ったようで、随分と涼しい。これなら１日歩けそうだ。暗いのでわざわざ旧道に引き返すはせず、少しだけショートカット。津の手前の吉野家で朝食をとる。
　伊勢音頭で、「伊勢は津でもつ、津は伊勢でもつ」と謡われたのが津宿。ちなみに初めの伊勢は伊勢国の意味で、後の伊勢は伊勢神宮を指すといわれている。当時の伊勢国の中心地だけあって、街が大きい。入ってすぐは古い家屋が続き見応えがあった。

　しかし、さらに進むと道路が拡張され、古い建物はほとんどなくなってしまう。やっぱり都市で宿場風景を残すのは難しいのか。街道は日本三観音の一つとされる津観音がある恵日山観音寺の参道に合流するため何度か曲がっている。昔訪れたことがあるが、そばを通るので恵日山観音寺の境内へ。美しい五重の塔があったが記憶にはない。後で調べたら平成13年完成の物だった。建物は閉まっているので観音様は拝めず。

　８月も下旬となると夜明けが以前よりも遅く、明るくなってきたのは５時近くだった。
　津市八幡町辺りも古い建物が多く残っている。東海道と違って伊勢街道は看板が少なく、まだまだ歩き旅が少ない場所なのだなと思う。でもこれこそ本来の姿だと思うと、趣が感じられ良いものである。

　看板だけでなく、座って休めるような場所がほとんどなく、困っていたところやっと公園発見。10分ほど休むつもりが、座ったまま寝てしまっていたようで気づいたら30分以上経っていた。

　津市の最後が雲出宿(雲津宿ともいう)である。しかし、伊勢街道の宿場は、神戸・白子・上野・津・松阪・小俣（斎宮）・山田(伊勢)の７つとするものや雲出の代わりに六軒が宿であるとしているものもあり、ここが正式な宿であったのかどうか、私にはよく分からない。幕府が整備した五街道の様に宿場以外に泊ってはダメなどという規則がなく、雲出宿や六軒宿が間の宿の様な役割だが、正式に宿泊できたということだったのかもしれない。雲出の宿にはあまりこれというものが残っておらず、写真は明治天皇の休憩した場所の記念碑。

　津市と松阪市を隔てる雲出川の両脇に小さな公園や案内板などが出来ており、伊勢街道にもやっとこういうのが出来たかと思った。しかし、ここは実際には街道筋ではない。昔の場所に橋がなく、迂回して新しい県道の橋を渡らざるを得ないのだ。そこにこういうものを作っても旧道の雰囲気がない場所では、街道歩きの良さが感じられない。橋のたもとにある常夜灯も当然移転させてきたものだ。

　六軒宿であった六軒町から市場庄町にかけては古い格子の家並みがずらりと並び、本日一番見応えのある宿だった。古い家並みが好きな人ならここだけに来る価値があるだろう。街並みを抜けたところに「格子戸の町並み案内」という詳しい看板があった。さすがにここには観光客が来るのか。しかし、私が来た方向の入口にも同じものを作って欲しかったところだ。

　続く久米町にも古い建物がたくさんあったが、一番見事だったのが舟木家長屋門である。舟木家は、南北朝時代から続く名家で、この長屋門は寛政六(1794)年に建築され、天保五(1834)年に改修されたそうである。

　松阪宿の入口にある薬師寺の仁王は迫力がある。14世紀の文献ではここの仁王は運慶の作とあるが、現存する仁王は運慶の作ではないことが分かったそう。この薬師寺は戦国時代、大河内城を攻めあぐねた信長が、和睦の条件に二男信雄を北畠家の養子に出すことになり、その時信雄が預けられたのがこの薬師寺で、義父にあたる北畠信意との対面もここで行われたという。

　松阪の町並みも中々レトロな雰囲気が漂い、結構好きな感じである。

　最高にレトロな雰囲気だったのがこの小津安二郎青春館。

　松阪を過ぎ、ゴールの伊勢神宮まであと30キロを割っている。出来るだけ今日は歩いて、最後は日帰りで元気な時に来て参拝しようと思っていたが、２日続きの寝不足で、体が非常に重くなってきた。まだ午前中だが、朝２時から歩いているのでまずまずの時間歩いている。終電まではまだ５時間ほどあるが、これで昼食をとれば眠くなってさほど進めそうにない。せっかく涼しく、昼間に歩いてももう熱射病の心配がないなとは思うが、今日は無理せず、早めに帰ることにした。紀勢本線の徳和駅が旧道沿いにあるので、次回スタートのロスもない。ということで本日は昼前に終了。12時28分の列車に乗って帰路につく。