Day5 浜田宿-郷田宿(江津)-温泉津宿 43㎞
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地図**
夜明け前の6時過ぎ、前回歩き終えた浜田駅前からスタートする。20分も歩くと住宅は途切れ、山間の谷間のような場所となる。放棄された農地を過ぎると道は藪に覆われる。地形から道筋は見えるが、進めなくなりそうで、いったん迂回路を探すが、どこにも出られそうにない。藪に覆われた道には、高さ1メートル以下、幅30センチ程度のけもの道のような隙間が続いている。撤退は嫌だったので、仕方なく突入する。枝やツルをかき分けかがみながら前進するも、隙間がどんどん狭くなってくる。そして、坂が急になったところで行く手を阻まれた。道は分かるが体を入れる隙間がない。草木の上に登って進もうとするも、すぐ折れて前には進めない。
結局あきらめて撤退することにした。この場所を抜けた人の記録があったので挑戦したが、今は鎌を持って草木を切り開きながらでないと進めそうにはない。ここを通ったとある記録は20年位前のもので、最近山陰道を歩いている皆さんはこの道を歩いていない。かなり以前から通れなくなっていたのだろう。
浜田から下府(しもこう)に行く道は2本あり、今回は多陀寺道を歩く計画だった。しかし、ここで後戻りし、迂回した場所がもう一本の下府道に近くなり、ルート変更。こちらは昔の道がほとんど失われており、結局下府までほとんど国道9号線を歩くことになってしまった。府の文字をここでは「こう」と読む。「こう」は国府を意味しており、石見(いわみ)国の中心がこの辺りであったことが分かる。国府のあった場所は分かっていないが、国分寺と国分尼寺のあった場所は分かっており、旧山陰道はそのそばを通っている。丘の上に位置する国分寺に登る道は現在の地形図にある道で、航空写真で見ると通れそうに見える。しかし、入り口付近が養護学校の敷地内を通っており、入れなかったとの記述を見つけたので、学校の西側の道を進んだ。
旧山陰道は国分寺の東側を通っているが、国分寺であった場所の真ん中に道があるのでそちらを進む。国分寺のあった場所は写真の寺とその向かいの幼稚園にまたがっている。
数百メートル進むと今度は右側に国分尼寺跡。こちらは基礎の石が残っており、自由に歩ける。
国分町を抜けると山陰道は現在の石見海浜公園の敷地内へと続いていたそうだが、現在は元の道が完全に失われている。明治32年測量の古い地形図でさえ古い道が消えている。この古い地図にある国道が現在の地図では中国自然歩道となっているので、この区間は旧街道ではなく旧国道である中国自然歩道ルートを選んだ。車がほとんど来ないのに舗装された田舎道で、歩きやすい良い道で助かった。
波子(はし)の街で旧山陰道と合流する。街の端も地形図では道が残っているが、行ってみると草刈がなされておらず、進めなくなっている。素直に引き返し、国道9号線に迂回する。敬川(うやかわ)で国道から離れ、街中を歩く。駅からも近い住宅密集地なのに空き家が多い。
都野津と江津の間の峠も地形図で点線、グーグルマップでは道のない場所だったが、草刈されており歩きやすい道となっている。ところどころにお地蔵さんがあり、案内板も建てられている。この地区は古道の整備をする人々がいるようでうれしくなる。
江津市中心部手前で街道は山側に入り、田舎道となる。郷田宿=今の江津本町に入る手前の下り坂には石畳が残っており、土床坂(つっとこざか)として知られ、江津名所の一つとなっている。
郷田宿は観光に力を入れているので観光地化されているのかと思いきや、廃屋が多く驚いた。でも趣きがあって良い場所だ。
古い日本家屋が並ぶ中、古い洋館があるなと思ったら古い郵便局の建物だ。右の水路には、船を繋ぎとめた鼻ぐり石が見える。旧郵便局の前に茶色く写っていつ壺は江津名産の石見焼き。石見焼きの水がめは有名で、この辺りを歩いているとあちこちで見受けられる。実は家の庭にも2つあり、近所でもよく見かける。これが江津の産品とはここに来るまで知らなかった。江戸末期には北前船で全国に出荷されていたほど有名なものらしい。
意外に小さな宿場だが、見るべき建物は多く、街道すじでない場所も少し歩いてから先に進む。
先日廃線になった三江線の線路が宿と江の川の間にある。鉄橋になっている部分だけ柵があり、立ち入り禁止となっているのには笑ってしまった。他の場所は歩いて良いのだろう。
山陰自動車道の下に併設された橋で江の川を渡る。
ここからの旧街道は、ほんの少し国道と道が重なるだけで、ほぼ別の道となっている。舗装されているが車の少ない歩きやすい道だ。浅利の手前から海岸に連なる風車群が見えたが、どれも微動だにしていない。風が弱いためかもしれないが、すべてが停止している。
前回と同じ距離なら黒松駅で終わりかなと考えていたが、足の痛みが前回よりはかなりましなので先に進むことにする。黒松の集落を過ぎたところもグーグルマップでは道が消えている場所だが、ここも草刈がされており、問題なく歩けた。今日は写真のような踏切でない場所を何度も渡っている。
今浦から福光の峠を越えると海岸の断崖が見えた。このような地形なので基本的に山陰道は内陸の山道が続くのだ。
旧街道は写真の谷から山を越えていたそうだが、今は道が全くないという。この先は再び国道9号に迂回だ。
歩道のない部分もあり、この区間の国道歩きは神経を使う。最後は国道から離れ、温泉津温泉のある海辺に降りる道だ。無事、暗くなる前に温泉津温泉に到着。
歩き終えてすぐに入る温泉は本当に気持ち良い~。
本日の距離 43km
山陰道の合計距離 185km