徒歩旅

Day15 追分駅-追分-石薬師宿-庄野宿-亀山宿-関宿 27.5km

 夏に痛めた足親指の爪がはがれてしまったためしばらく徒歩旅を中断していたが、年内に東海道を完歩すべく、師走になって一気に歩くことにした。9月に伊勢まで歩いていたのでその続きとするなら、伊勢から京を目指す伊勢別街道を歩くべきだが、お伊勢参りとは別に旧東海道を完歩したかったので、旧東海道の歩いていない部分から再開することにする。徒歩旅としては18日目だが、日数は伊勢街道と東海道の分岐までの14日に足していくことにし、この日が15日目とする。
 新宿発の夜行バスで早朝名古屋に着き、近鉄で追分へ向かう。追分駅は近鉄本線ではなく、近鉄内部線にあり、乗換駅の四日市では一度改札を出ねばならなかった。出たついでに、駅の蕎麦屋で朝食。一番安いかけそばです。
かけそば
 近鉄内部線は線路が狭く、列車はミニチュアのように小さい。線路間がそれまでに乗っていた近鉄本線の半分なので、車両自体が観光特化すれば人気が出るのではないかと思われるかわいらしさ。
内部線
 8時に追分駅から歩き始める。5分後には東海道と伊勢街道の分岐である日永の追分に到着した。この追分は、地元の人が水を汲みに来る名水の湧き出ており、前回は暑くて水をがぶ飲みした。しかし、今回は冬の朝とあって寒いし、歩き始めたばかりなので水を飲む気にもならない。ここからが本当の東海道歩きの再開である。
 しばらく平地を歩いた後、道は急な上り坂となる。日本武尊(ヤマトタケル)が東征の折に杖をついたと古事記にある杖衝坂である。芭蕉の「徒歩ならば杖衝き坂を落馬かな」の句でも知られている。
杖衝坂
 9時20分に石薬師宿に到着する。写真は小沢本陣跡。
小沢本陣跡
 石薬師宿のはずれで国道1号線を陸橋で渡ると石薬師寺がある。紅葉が美しく、ここで一休み。敷地内には鳥居とともに天満宮があり、いかにも日本的な寺院だ。
石薬師寺
 10時半頃に庄野宿到着。この宿場間は東海道にある宿場間で2番目に短く、3キロもない。実際に歩いている距離は少なくとも一つ宿場を進めばそれだけ進んだ気分になり、元気が出る。石薬師宿に比べ古い民家が多いが、伊勢の国に入ってからはずっと多いので、だんだん見慣れてきてしまった。それよりもここで気に入ったのは、川俣神社のスダジイの木。幹周りが5メートルあり、樹齢300年とされる巨木である。周りに木がなく、1本だけぽつんとあるのが見事だ。巨木好きなのでしばらくうっとり眺めてしまった。
川俣神社のスダジイ
 延々と続いた鈴鹿市の最後で印象に残ったのがこの和泉町公民館の建物。レトロな建物だと思われるが、何の説明もなく、普通に公民館として使われている様子だった。
和泉町公民館
 亀山市に入り、昼時となるが、旧道沿いには食べるところがない。国道1号沿いにある店が時折見えるが、回り道が面倒だなと思っているうちに、1号線は遠ざかってしまう。そうなると空腹感が増してきて苦しくなる。結局次にスーパーが見えた時点で旧道を離れ、スーパーに向かう。旧道を離れるとコンビニがあり、レストランがあり、マクドナルドまであったが、最初に見えた巨大スーパーで、弁当とスナックを買って昼食にする。実はスナックなど途中で買ったことは一度もなかったが、弁当だけでは足りないくらいの空腹感で、あまれば宿でつまみにして酒でも飲もうと買ってみたのだ。その結果、一気に全部食べてしまった。
ランチ
 亀山宿は城下町だけあって道が何度も曲がっている。せっかくなので東海道を離れ、亀山城を見に行く。明治維新の廃城令でここもほとんどの建物が取り壊されてるが、入り口近くにある多門櫓は江戸期のもので残っている。修復されたばかりで白い壁が眩しく、色づいた木々と青空に映えて美しい。
亀山城
 亀山宿には古い建物が多く残っており、この街だけを見に来る観光客いるようで、ここでは歩いている人を何人も見かけた。
 京口坂を下って竜川を渡るともう亀山宿ではなく、野村と呼ばれていた集落であるが、この辺りまで宿場町を思わせる古い建物が続いている。中には古い建物を使って伊勢うどんを出している店もあった。伊勢神宮から離れてるのにと思ったが、ここも伊勢の国だ。
野村森家住宅伊勢うどん
 JR線を陸橋で越えるとひたすらまっすぐな道が始まる。太岡寺畷(たいこうじなわて)である。畷がまっすぐな長い道を意味することをここで初めて知った。川沿いで風景の変化に乏しく、向かい風が強かったこともあり、この区間が歩いていて一番きつかった。
太岡寺畷
 きつい太岡寺畷を過ぎるといよいよ関宿である。15時半は予定よりも1時間早い。東海道の宿場の中でも古い町並みが最もよく保存されている宿の一つで、国の重要伝統的建造物群保存地区として選定されている。2005年にもママチャリツアーで訪れ泊まってるが、今回はここの古民家で営業をしているゲストハウスに泊まる予定である。
 8年振りだが町並みはあまり変わっておらず、街道に沿って延々と古い建物が残っている。
関宿街道
 個人商店が普通に営業しているのもうれしいところだ。
関宿商店
 以前はなかったと思われる場所のひとつが眺観亭、ここの2階から街道が覗けるようになっていた。
関宿眺観亭
 宿泊予定の石垣屋も以前は営業していなかったひとつ。古民家をそのままほぼ改造なしに宿として営業している。
関宿石垣屋
 明日は暗い時間に出発したいので、宿には寄らず、先に宿を見て歩く。宿のやや西よりにある地蔵院は本堂、鐘楼、愛染堂の三棟が国の重要文化財に指定されている。
関宿地蔵院鐘楼
 地蔵堂の向かいにある会津屋は、関宿を代表する旅籠の一つだった場所だ。
関宿会津屋
 関宿を一通り見た後、石垣屋に戻りチェックイン。江戸期の建物に一度は泊まっておきたいとここまで歩いてくる中で思っており、ここに泊まるのをかなり前から楽しみにしていた。江戸時代のままの建物で、古道具を集めて無造作に展示してあるのも良い。この日は宿のオーナーと話しながら日本酒を飲んでいると知らぬ間に買ってきた5合を飲み干していた。
本日の距離 27.5km
徒歩旅の合計距離 545.9km + 27.5km = 573.4km
東海道の合計距離 461.2km + 27.5km = 488.7km
本日の出費 交通4210円 + 飲食2100円 + 宿2500円 = 8810円

*徒歩旅の合計距離はお伊勢参りを含めた積算距離
*交通費は前日移動分からの合計。
*夕食は宿で自炊。宿代は寝袋泊まりの値段。
*宿は三重の古民家ゲストハウス 旅人宿石垣屋