Day9 高岡-小杉-下村-東岩瀬-東水橋-滑川宿 40㎞
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地図**
5時40分に宿を出発する。6時前から路面電車が動いていて少し驚いた。24時間営業のカラオケ屋からは歌声が聞こえてくる商店街を通り、旧北陸道に戻る。戻ってすぐに高岡大仏がある。昔来た時は小さいなと思った記憶があるのだが、今朝はなぜか立派に見える。
庄川に出たところで空がひらける。ちょうど朝日が射してきた。ここで小休止。
庄川の橋は国道だが、渡ってすぐに国道を離れ、旧北陸道は住宅街を通る。国道472号を渡った先の私有地に三ケ一里塚。
一里塚の脇にはテニスコートがあり、脇にベンチがあったので、休憩。手持ちの非常食で朝食とする。
旧道はここで高校の野球場に分断されている。誰もおらず通ることはできそうだったが、グランドを横切るのはためらわれ、学校敷地外の道を歩く。グランドの逆側まで来て、振り返るとちょうど旧街道の部分に入り口があり、こちらから来ていたら歩きたくなったかもと思う。
高校を過ぎると小杉宿に入ってくる。あまり伝統家屋は残っていないが、江戸時代創業で、建物も江戸建築の料亭中村楼がある。ただし、外壁は新しく、街道筋から見える部分に面白みはない。左、右と直角に曲がった先の左側に小杉展示館がある。明治44年(1911)年に銀行として建てられたものだ。
さらに20分ほど歩いた手崎に道標が残っている。江戸初期の北陸道は右の富山方面だった。1609年に富山城下で大火があり、初代加賀藩主で隠居して富山城に住んでいた前田利長は高岡城に移動した。利長は街道を高岡中心に再整備し、富山城下を通らず、東岩瀬を通る海側に北陸道を移動させた。その2つの道の分岐がこの場所である。
富山県に入ると神社をガラスで囲うのを見かけるようになった。雪対策だろうか。
旧道沿いにはずっと開いている商店もなく、早朝からまともに食事をしていない。この先も地図を見る限り食料入手が難しそうなので、鷲塚で道から逸れて、コンビニへ。イートインで充電できたので、少しのんびりして外に出ると、晴れていた空が、一転真っ黒に。一雨来そうな空模様だ。
案の定、雨が降り出した。一気に雨足が強くなり、雨宿りできる建物に着く前にびしょ濡れになった。雨が止み、再び歩き出したが、靴の中が濡れてしまったために違和感がある。乾いている場所がないと靴を脱いで確かめることもできない。これで足にマメが出来てしまった。しかも左右ともに2か所づつ。足が痛いので完全にペースが落ちてしまった。気持ちに余裕がなくなり、下村宿では写真を一枚も取らなかったし、その先では道を間違えたりもする。
富山市中心部の下流である神通川を渡るころにようやく晴れてきた。
神通川の河港に当たるのが東岩瀬宿となる。古い建物が数多く残る街並みは見応えがある。
東岩瀬は、幕末から明治にかけて日本海の北前船による交易で非常に栄えた。当時栄えた廻船問屋が今も軒を並べているが、中でも有力であった森家の建物は、国の重要文化財に指定され、さらには日本遺産にも指定されている。明治11年の建造で、一般公開されている。ちょうど文化の日で、無料公開日となっていたためか、観光客が大勢訪れている。大きな梁や見事な木目の天井などが素晴らしい。トイレの戸に屋久杉の一枚板を使っているのだから、その贅沢な様は驚くほどだ。足を休める目的で、囲炉裏脇に座ると立てなくなり、ここでゆっくりと休憩する。
所狭しと並べられている展示物も興味深いものが多い。
森家の隣の馬場家も同様に日本遺産に指定されて、一般公開されている。普段なら同じようなものだろうと1軒見るだけで済ますところだが、文化の日でこちらも今日だけ無料。そして、もう少し靴を脱いで休んでいたいという思いもあり、こちらも見学する。古い電話機が家に設置されていたのが興味深かい。
街道に面した入口から出ても良かったが、馬場家は港側にも出入口があり、そちら側から出てみた。すぐ近くに富山港展望台が見える。休んだおかげで足の痛みもないからと入ってみたら、エレベーターはなく、長い階段のみ。迷ったが登ってみた。港は目の前なのでよく見えたが、遠くは霞んでいて雪山も能登半島も見えず。
東岩瀬から浜黒崎に至る海沿いの道には江戸時代の松並木が残っており、昭和40年に県指定天然記念物に指定されている。指定当時は44本あった江戸時代の松は、その後の50年で枯れてゆき、平成29年現在で7本残るのみだそう。
浜黒崎の先に常願寺川がある。河口では釣りをしたり、サーフィンをしたりしている人々がいる。肉眼で見ている時には気づかなかったが、サーフィンをしている人を撮った写真を拡大してみると対岸に見えている陸地や建物が縦に間延びしている。蜃気楼だ。見えていたのは蜃気楼で有名な魚津から黒部にかけての辺り。逆側からでも同じ現象が起こるようだ。肉眼でもっとちゃんと見ておくべきだった。
常願寺川を渡るとすぐに水橋だ。白岩川にかかる東西橋を渡ると東水橋宿となる。伝統家屋は数少ないが一応残っている。
東水橋宿の出口辺りに一里塚。日没時間が近づいてきたが、本日の目的地である滑川宿まであともう少し。
滑川市は宿場観光に力を入れており、あちらこちらに案内板を設置している。「なめりかわ宿場回廊めぐり」というモデルコースまで作ってある。明るい時間にゆっくり見るべきだったなと思いながら、夜の宿町を楽しむ。
本陣があった場所は小さな公園になっており、休み小屋もあった。東岩瀬で長く休んだ後はマメの痛みもやわらいで、なんとか無事に着いたなと思いつつここでものんびり。
本陣公園から滑川駅まで駅まで意外に遠かったが、18時15分に無事到着。滑川駅前にも1軒ホテルはあるが、競争していないためか割高に感じる価格設定で、本日の宿は富山駅前にとっている。面倒だが、列車で富山市へ。
本日の距離 40km
北陸道の合計距離 292km